オフィスの甘い罠
その言葉は渇いた岩に水が
染み渡るように、静かに
柊弥の心に降りてくる。



不思議な感覚だった。



柊弥は吸い込まれる
ように、三浦の言葉に
耳を傾け続けた。



「だからもし今キミが、
本気で彼女を取り戻したいと。

そばにいてほしいと
思ってるなら――それは、
きっと――……」




本気でアイツを欲しいと
思うなら、きっと―――。




柊弥は目を閉じる。



まぶたの裏に浮かぶ面影を
心の目でジッと見つめた。



(オレは―――アイツを……。

梓を――…)




「………まぁ、年寄りの
ヨタ話はここまでだな。

後は自分でゆっくり
考えてみろよ」



穏やかな声に目を開くと、
いつの間にか三浦は
出入口のドアに手をかけていた。
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