オフィスの甘い罠
「圏外って……ちょ……
どこまでふざけてんの……!」



お決まりのアナウンスが
聞こえてきた携帯を、
あたしはプルプル震える
指でそっと閉じた。





――信じらんない。



今のはホントに柊弥?



ホントに、《紫苑》が
こんな目にあってんの?



「イミわかんないって……!」



柊弥があたし指名でまた
来ることも、一方的に
押し切られたこの状況も。



全部が全部、ワケわかんない。



「紫苑がお客に呼びつけ
られて出勤するなんて、
ありえないし――!」



そう――《紫苑》は、
そんな安っぽい女じゃいけない。



会いたい会いたいって
足元に群がる男達を、
余裕の笑みでスルリとかわす。

そーゆー女なのに。
< 39 / 288 >

この作品をシェア

pagetop