オフィスの甘い罠
(律儀に来てやる必要
なんてないのに。

そもそもアイツがろくに
人の話も聞いてないんだから)



しかもアイツはあたしに
大金つぎ込んでくれてる
常連ってわけでもない。




本当に――ちゃんと断れ
なかったからってあたしが
アイツに合わす道理
なんて、これっぽっちも
ないのに……!




「おはよう紫苑。

指名は10時って言ってたっけ?」



身じたくを済ませて控え
ルームに座ってるあたしを
見つけたママが声をかけてくる。



あたしはふてくされた声で、



「ハイ。

今日はその席一本で
お願いします。

なんか、向こうの希望なんで」



「あら、そうなの?

んー、でも他の上得意様も
紫苑見かけたらお呼び
かかるんじゃないかしらぁ」
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