オフィスの甘い罠
ママの言ってるのはつまり、

“先約がそう言ってても
他にもっといい金ヅルが
いたらそっちに移れ”

ってことで、この世界じゃ
当たり前のことだ。



あたしもそれは充分承知
してるから、



「大丈夫です。
どのテーブルよりも高い
お酒、入れさせますから」



こうなったら仕返しだ。



あたしを呼びつけて
さらに独占までしようと
するのがどんだけ身の程
知らずかってのを教えて、
きっちり後悔させてやる。



そんなことを考えながら、
あたしはそこで時間をつぶした。



そして店の賑わいも
高まってきた10時少し前――


部屋に入ってきた
ボーイが、高々と声を
張りあげる。



「高城様ご来店でーす!

紫苑さん、お願いします!」



「―――来たか……」
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