オフィスの甘い罠
あたしはゆっくりと立ち
上がってホールに出た。



まばゆいライトのきらめく
店内を颯爽と歩き、
ボーイの誘導する席に
到着すると――、



「いらっしゃいませ、高城さん。

お待ちしてましたわ」



ニッコリとほほ笑む
あたしの内心は、戦地に
乗り込んだ兵隊さながら。



『見てなさいよ、高城柊弥!』



そんな闘志に近い感情を
胸に静々と柊弥の横に
座り、彼のリクエストした
お酒を作り始め――、



「急でしたから少し驚いたわ。

あたしのこと覚えてて
くれたなんて感激だけど」



うわべだけの言葉でそう
言うと、柊弥はフンと鼻で
笑って、



「感激? ホントか?」



「もちろんよ。

金城さんのお供でなくて
ご自身で足を運んでくれる
なんて、嬉しいわ」
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