オフィスの甘い罠
戸籍のことなんかはよく
わかんないけど、親が離婚
してるなら苗字が
違ったっておかしくない。



それじゃあ……ホントに……。



「柊弥が……社長の息子……」



「えっ? なんですか?」



うっかり声に出して
しまってたけど、小さな
呟きだったんで幸い同僚
には聞こえなかったらしい。



あたしはあわてて首を横に
振って、



「ううん、何でも。

教えてくれてどうも」



そっけなくお礼を言って
話を終わらせると、同僚は
物足りなそうな顔を
しながらも身を引いた。



あたしも前を向き、まだ
メールの文面が映るPC
画面を眺めるけど――
そこから、体が動かない。



心臓が壊れたエンジン
みたいにバクバクいってた。



マウスを持つ掌が汗で
濡れてくるのもわかる。
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