大好きな君にエールを*番外編





「ふふっ、私は仕事に戻るわね」


優しい香りを残して、病室を出た和島さん。代わりに父さんと母さんが入ってきた。


「言わなくて、ごめん」


最初に出てきた言葉は、これだった。何よりも言わなきゃいけないと思ったからだ。


「言えなかったのは……同じ夢を目指している仲間に、迷惑をかけたくなかったから。俺だけ外されたくなかったから」


「うん……うん」


「仲間に負けたくなかったから。仲間が……みんなが大好きだったから。みんなで甲子園に行きたかったから」


それに、実貴にも連れて行きたかったから。それは胸に秘めた。


母さんの涙につられて、視界が滲む。


「俺、本当に甲子園に行きたかった。やっと掴んだこの切符を……俺の分を手放したくねぇよ」


甲子園に行くためには、自分の体なんてって思うくらいだった。頭痛にもフラフラにも耐えられた。


「2人も連れて行きたかっ……」


「元気っ!」


言い終える前に母さんに包まれた。同時に、俺の涙腺は崩壊した。





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