大好きな君にエールを*番外編
そう言ったシゲの顔を見てみると、泣いていた。
「試合……最高だった」
涙がこぼれ落ちる。
「……すっげぇいい試合だった」
また一粒、シゲの頬を伝う涙。純粋で透明な色をした涙が次から次へとこぼれる。そっとシゲの手を握った。
「…………俺も、出たかった」
シゲはきっと、この会場にいる誰よりも、この甲子園を楽しみにしていたと思う。
そして、誰よりもこの試合に出れないことを悔やんでいると思う。
俯いて肩を震わせて泣くシゲ。そんなシゲに何も言えなくて、ただ、握り返してくれた手を離さないようにしていた。
泣いているのはシゲだけじゃない。試合に出れなかった後輩たちや、応援スタンドにいるみんな、そしてあたしもだった。
「くっそ……マジでアイツら最高だよ」
そして少ししてからのシゲからは、愚痴が出てこなかった。代わりに、最高のスマイルで球場を見つめていた。