大好きな君にエールを*番外編





彼女でもなかったあたしに引き止めることは出来なかった。シゲが花龍に行ってから、想いを伝えていればよかったと何度も後悔した。


でも、想いを伝えていなくてよかったと思う。


シゲは恋愛をするために花龍に行ったんじゃない。大好きな野球をするために、大好きな故郷を離れたんだ。


そして素敵な仲間と出会って、いろんな困難を乗り越えて笑い合って、やっと……やっとの想いでこの甲子園の切符を手に入れた。


シゲ、今……どんな気持ち?あたしね、シゲのことを考えると泣きたくなるよ。


「って、実貴、何泣いてんだよ」


だけど言わないんだから。


どこかの野球バカの為に泣いただなんて、ね。


「シゲ、ごめんな」


「お前との約束……守れなかった」


それから監督さんやコーチを含め、他の部員もシゲの元へ集まってきた。


汚れたユニフォームに身をまとい、泣きながら頭を下げるその姿は、本気で戦った証だった。


「全力で戦ってくれた、それだけでいい」


シゲは、本当は勝ち負けなんてよかったと思う。


ただ、純粋にみんなに大好きな野球に没頭してほしかったんじゃないかな?





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