大好きな君にエールを*番外編





「スタンドから見たみんなの試合、最高だった。初めて花龍の野球を応援席から見て、うわっ、花龍って、こんなにカッコいいんだ、って思った」


部員の充血した目にさらに光が浮かぶ。


「俺も出てぇな……キャッチャーしてみんなと野球してぇなって思った」


もう誰も、野球帽を深く被る人はいなかった。みんな、真っ直ぐにシゲを見ていた。


「マウンドの上にいた永松から守備や打席に立つ奴ら、ベンチから大声で応援する奴ら、みんなが羨ましくてしかたがなかった。それでも、同じ場所にいることが幸せだと思った」


今日は何度、シゲの涙を見たかな?純粋で綺麗な涙。この涙は一生忘れない。


「みんな、ほ……本当に、ありがとう」


「シゲ……」


仲間と堅く抱き合った彼。何度も肩を叩き合っていた。そして、枯れるくらいに涙を流していた。


3年間の夏が終わった。


シゲにも、あたしにも、もう二度と来ないこの夏。


大切な、大切な高校3年生の夏が静かに終わりを告げたのだった。





< 203 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop