彼の視線の先、彼女。
蚊の飛ぶ音すら聞こえない、
ただチョークのカツカツした音だけだった空間。
けど、私が叫んだ瞬間とまったその音。
ボキッというチョークが折れる音が鳴った後はクラスメートの息を呑む音くらいしか聞こえない。
赤いジャージ、ゴツイ肩幅、2mの巨体。
どう見たって体育教師なのに何故か数学教師で。
その体から湧き上がってくる目に見えないオーラというものが今の私には見えている。
見たくなくても、黒いオーラが全身から。
「・・・っく、バカ・・・っ」
隣からは押し殺された千尋の笑い声。
けれどシンとした教室の中ではかえって目立っている。
ジ・エンド。
そう思った瞬間、数学教師ゴリちゃんこと郷田先生がゆっくりと振り返った。