コスモス
……………
放課後の下駄箱では、もう明日可が待っていた。
いつもの定位置。柱にもたれかかったまま、外の雨を見つめている。
空からとめどなく降り続ける雨。
そっと手を外にさしのべる明日可。
穏やかで優しい表情が、灰色の景色に浮かぶ。
僕はただ黙って、その横顔を見つめていた。
やがて、はっと気付いて明日可は振り向く。
僕はその一連の動作を、下駄箱にもたれかかったまま見つめていた。
ニヤッと笑う僕。
眉間にしわを寄せる明日可。
「…いつから見てたのよ」
「ん?さぁ~いつからだったっけ?」
「…馬鹿シュウ」
ぷいっと顔を背ける明日可。
ふくれっ面の明日可も可愛くて、思わず僕は吹き出した。
「何で笑うの~!?」
「あは、わりぃわりぃ」
なんてことない出来事が、愛しくて愛しくて仕方なかった。
その幸せが、初めて話したあの雨の日から何一つ変わってはいなかったから。