コスモス
…しとしとと、遊ぶように雨が降る中、僕等は並んで歩いて帰っていた。
雨の日に並んで歩いて帰るのは、僕等が付き合い始めた日以来だ。
あの日はつらく感じた距離も、今ではそんなに感じない。
あの日よりはずっとずっと近くに感じていた。
「雨、続くのかな?」
ふいに明日可が口を開く。
「梅雨入りもうすぐだしな。今週の土日は、晴れるって言ってたけど…」
「ほんと!?」
目を輝かせて、明日可が顔を向けた。
「え、何?何かあんの?」
思わず足を止める。
明日可は僕に笑顔を向けて言った。
「もし、週末お天気だったらさ」
耳障りだったカエルの合唱が、止んだ。
「デート、しませんか?」
…明日可が病気だと知ってから、僕にはプラス思考が足りなかった。
何もかもを悪い方向に考えて、不安ばかりを募らせていた。
でも、何が変わった?
明日可は、何にも変わってないじゃないか。
病気だって、すぐすぐ悪化するわけじゃない。
今の明日可が突然いなくなるなんて、そんなの絶対ありえない。
ふっと、肩の荷がおりたような気がした。
普通と何も変わらない。
デートだって何だって、僕等は普通にできるんだ。
「うん!デート、しよう!」
嬉しそうな明日可の笑顔で、僕の心の天気はすっと晴れ渡っていった。