コスモス
明日可もまた、1つ強くなったんだろう。
僕等はこうして1つづつ、壁を乗り越えて行くしかないんだ。
慣れた手つきで剥いたリンゴを明日可に渡し、果物ナイフを置いた。
「ねぇシュウ」
僕はリンゴを一口かじる。
みずみずしさが、口の中に広がった。
「夏休みは、あんまりお見舞い来なくていいからね」
ゴクンとリンゴを飲み込む。
僕は視線を明日可に移した。
「え?…」
「あ、違うよ。悪い意味とか、全然そんなんじゃなくて…」
手に持ったリンゴを見つめながら、明日可は言った。
「あたしね、ほんとにシュウに、受験頑張って欲しいの。受験って、夏休みが結構勝負でしょ?だから…」
明日可と目が合う。
「勉強に、集中して欲しいの。もうあたしは大丈夫だから」
『もうあたしは大丈夫』
…明日可が、何か乗り越えた事を示す言葉だ。
もう大丈夫。
僕等は本当に、強くなれた。
「…わかった。めっちゃ頑張る」
ほっと、明日可は微笑んだ。