コスモス

明日可もまた、1つ強くなったんだろう。
僕等はこうして1つづつ、壁を乗り越えて行くしかないんだ。

慣れた手つきで剥いたリンゴを明日可に渡し、果物ナイフを置いた。

「ねぇシュウ」

僕はリンゴを一口かじる。
みずみずしさが、口の中に広がった。

「夏休みは、あんまりお見舞い来なくていいからね」

ゴクンとリンゴを飲み込む。
僕は視線を明日可に移した。

「え?…」
「あ、違うよ。悪い意味とか、全然そんなんじゃなくて…」

手に持ったリンゴを見つめながら、明日可は言った。

「あたしね、ほんとにシュウに、受験頑張って欲しいの。受験って、夏休みが結構勝負でしょ?だから…」

明日可と目が合う。

「勉強に、集中して欲しいの。もうあたしは大丈夫だから」


『もうあたしは大丈夫』


…明日可が、何か乗り越えた事を示す言葉だ。

もう大丈夫。

僕等は本当に、強くなれた。


「…わかった。めっちゃ頑張る」

ほっと、明日可は微笑んだ。

< 307 / 449 >

この作品をシェア

pagetop