コスモス
「ん?」
「カズ君って、あたしのこと未だに『瀬堂』って呼ぶよね。っていうか、タケ君も誠二君も」
千歌に関してはすぐにみんな名前で呼んでいたが、どういう訳か明日可はずっと『瀬堂』だった。
「…あぁ」
「他人行儀だし、シュウみたいに『明日可』でいいよ?あたしだって名前で呼んでるし」
「…あぁ」
同じ返事しかしないカズ。
明日可は思わずカズの顔を覗き込んだ。
「ちょっと聞いてるの?」
「…あぁ…、くくっ」
堪えきれずに、カズは背の高い背中を丸めて笑い出した。
「ははっ、あははっ」
「ちょ…、何よ?」
困惑する明日可。
目に涙を浮かべて、カズは訂正する。
「や、違…違うんだ」
「え?」
「俺らにとって、『瀬堂』は『瀬堂』じゃないといけないんだよ」
「え、どういう意味?」
ようやく笑いの収まったカズは、眉間に紫波を寄せたままの明日可を見上げて言った。
「聞きたい?」