コスモス

「…明日可は、俺に向かって言ったんだよ。…お前らにはわかんねぇよ」

髪をクシャッとかきながら、僕は投げ捨てるように答えた。

わかるわけが、ない。


「…悪いけど、帰ってくれる?」


2人が戸惑うのがわかった。
でも僕は、この一言しか言えない。

「…帰って」

俯いたまま呟いた。


カズが、ゆっくりと立ち上がる。続いて、ミキも立ち上がった。

「…何度も言うようだけど…。修、お前逃げてるよ。本当の瀬堂と正面からぶつかること、怖がってんのはお前だよ。ずっと逃げてきた問題と、今ぶつかってんだよ」

カズの言葉に、俯いたままも答えない。
入り口のドアに立ったミキは、僕の方を見て言った。

「…確かに、言われたのは須川君だよ。2人のことなんて、ミキ達にはわからないよ。でもね…、悪いけど、明日可のことをよくわかってるのは須川君よりミキだよ。明日可は…人を傷つけるような子じゃない。…自分が傷つく道を、選ぶような子だよ。須川君は明日可といて、そんなこともわからなかったの?」

ミキの視線が、僕に刺さる。

そのままミキはきびすを返し、階段を駆け下りていった。

後に、カズが続く。

僕は、自分の座った足元を見つめながら、2人の足音を聞いていた。


『自分が傷つく道を選ぶ子』


本当の、明日可の気持ち。


…僕が、選ぶべき道。












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