らっく!!
「何だよ、その不満げな声は」
間抜け顔が一転して元の顔に戻った。
「会長が人間らしいことするからでしょ!!」
「お前、俺のことを一体なんだと思ってんだよ?」
「人の皮を被った悪魔」
悪びれもせず言い切るその態度は賞賛ものだ。
さすが俺に歯向かう唯一の女。
度胸と無謀さは人一倍あるようだな。
「じゃあ悪魔は退散するか。会計よろしくね、大原さん」
少しは反省しやがれ、バーカ。
それこそ悪魔という単語が似合いそうなほど無情に店を出る。
BGMは領収書を覗き込んだ大原の口から出た叫び声だ。
「えっ!?ちょっとなにこの値段!!コーヒー一杯1500円?!むりぃぃぃ――っ!!」
ああうるさい。
バーカ。
もう払い終わってんだよ。
待っててやるから早くでてこいよ。
「ホント…面白いやつ…」
呟いた声はまた大原の叫び声にかき消された。
その後、膨れっ面になった大原を散々苛めたのは言うまでもない。