Bar GRANT
「いいか、客が見てたのは、人間としてのお前じゃない。skaalというバンドのボーカルを、ギターを、ベースを、ドラムを見てたんだ!」
こんなに興奮したNAOを見るのは、初めてだった。
あまりの迫力に気圧されて、俺は何も言い返せなくなった。
「それなのに、ステージでお前はいつもワンマンで、MCでも俺たちのことなんて見向きもしなかった。そんな不協和音、誰が好きになる?」
不協和音、という言葉が妙に重く、俺の胸に突き刺さった。
だんだん大きくなるNAOの声に反応して、周りが息を呑む空気が伝わってきた。
「いつまでも小さな小屋でしかライブやらせてもらえなくて、客が後に繋がらなかったのがどうしてか、考えたことあるのかよ?」