愛しの black panther
「ご…う…っ…」
口を開きかけたあたしは、突然引き寄せられ強く抱きしめられていた。
「黙ってて悪かった…仁のこと…」
豪の腕の中であたしは首を横に振る。
「お前が初めて此処に来た日…言おうとしたんだ…でも言えなくて…タイミングを逃しちまった」
少し身体を離し「聞いて…くれるか?」と、少し悲しげにでも真っ直ぐな漆黒の瞳をあたしに向ける。
あたしは少し微笑んでこくんと頷いた。
「あやめ…」
豪はあたしを立たせ膝の間に座らせると、後ろからふわりと抱きしめた。
「…俺と…仁が…双子の兄弟だってのは…聞いたか?」
「…うん…龍也と葵も同級生で何時もツルんでたって」
豪の問い掛けにあたしは答える。