ビタミンC
僕の話は完全スルー。
「そうなんだ」
「でな、『地下鉄に乗って』は特に…」
映画も何度も観ただの、小説に至っては擦りきれる程読んだだのと彼女の話は止まらない。その間僕は「そっか」と適当に相づちを打った。
「ふぅん」
僕が何度目かの相づちを言った時、彼女はまた本の背表紙を触り始めた。
「こんな話したの初めてや…」
と口許を緩ませた。
生まれて初めて"マシンガントーク"というものを経験した僕は、話が一段落着いた事にほっとしていた。
「本…すっごい好きやねんけど、周りの友達は全然読まへんから話できひんねん」