ビタミンC
「って言っても今日初めて読んだんだけど」
彼女の年齢は分からないけれど、雰囲気的に敬語を使う相手ではないと、なんとなく思った。
「なにそれ、そんなん好きに入らんわ」
と言って彼女は可笑しそうに笑う。
僕の顔の下から抜けながら笑う彼女の顔をきちんと見ると、普通に可愛い子。飛び抜けて可愛いわけでも、絶世の美女でもないけれど、普通に可愛い。
「いきなり名前を聞くような人には言われたくないかな」
と皮肉っぽく言う。
「お父さんがな、浅田次郎めっちゃ好きやねん。だから、うちも何冊が読んだことあって…」