イケメンゴースト

 「杏、待てよ!」

初めて聞いた夏の怒った声。
私は足を止める。


「…」
夏は何も言わずに
私を抱きしめた。


「なんで行っちゃうの?
理由くらい
教えてくれたっていいじゃん」

私が黙っていると、
夏が私の肩をつかんで
自分のほうに向かせる。

「どうした?何かあった?」
「ううん。…考え事。」  
「そっか。…心配したよぉ。」
「ごめんね」

夏は私を
ギュッと抱きしめる。

体をはなしたかと思うと
また抱きしめられる。

「もう、心配させるなよ…?」

「うん。わかって…」

言葉を言い終わらないうちに
私の唇は夏の唇に塞がれた。
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