*恋の味[上]*【完】
引っ越しトラックが発車したのを見送る。
見えなくなるまで見送り、お父さんは、私の頭を撫でて笑った。
「それじゃあ、俺らも行くか」
「うん!」
苦しかった数ヵ月が、成長するための数ヵ月と思えばいい。
亡くなったお母さんが残してくれた“命”。
それを、私は大事にしようと胸に誓ったのだから。
何度もくじけた私でも、やっと守れそうな気がするよ。
最後に、お世話になったボロアパートを見つめる。
「ありがとう」
そんな小さな声は、風とともに消え、私の呟きとなった。
「おーい、真麻〜!」
格好いい車のドアを開けて、早くしてくれとでも言うような声をだすものだから、車へと向かった。
「最後なんだからいいじゃない」
お父さんに笑いながら文句をつけた。
「んあ?またいつでもくればいいだろ」
自分勝手なお父さんに頬を膨らます。
それを見て、「可愛いな、コラ」と膨らんでいる頬を引っ張った。
いつになったら親バカを卒業するのだろう、と本気で思ったりもするけど、今の関係が結構好きだったりする。
「いひゃい〜!ひゃなしてぇ〜」
「ハハッ!じゃ、出発進行〜」
小さい子みたいに言うお父さんを気づかれない程の声で小さく笑った。