チョコレート大作戦!
「楓が好きなものねぇ……」
口を曲げて、「う~ん」と考え込む鈴さん。
ゴクリと生唾を飲んで鈴さんを見つめる。
「やっぱりアレかしら?」
「……アレ、ですか?」
恐る恐る尋ねるあたしに鈴さんが優しく微笑む。
「そう。ちっちゃい頃から好きだったものなんだけどね」
楓が小さい頃から好きだったもの……?
「さぁ、作りましょ♪」
着物の上からエプロンを着た鈴さんがやる気満々に腕を振って冷蔵庫から材料を取っているのを、ただ呆然と見ているあたし。
なんか場の流れでこんなことになっちゃったけど……
――『楓が小さい頃から好きだったのは、木の実のチーズケーキタルトだったわ』
でもそのタルトも、駅前のケーキ屋さんで買ってきていたものらしい。
「あのぉ……鈴さん?」
「どうしたのぉ?」
上機嫌に最近のヒット曲をハミングしている鈴さんが振り返った。