半熟cherryⅡ

薄明かりの裏通り。

街灯と建物から漏れる光に照らされる横顔。

それは遠めからでも舞浜だとわかった。





なんでアイツこんなトコにいるんだ…?

…また写真撮ってんのか?



だとしたら俺らの方を向いてるはず。

しかもあんなガッツリ見える位置にはいないだろう。



舞浜は。

ケータイを片手に誰かと話しながら周りを気にしてる。





…あの様子だとまだ俺らには気付いてない。



じゃあなんでココに…?







「一美センセーの名前で予約入れてあるから先に入ってていいってさ」



電話を終えた涼真の声がした。





「郁、どした?」

『…や、なんでもねぇよ』

「じゃ、入ってようぜ」





…気になりはしたけど。



これ以上俺と茜のジャマはいらない。

涼真と一美センセイだけで充分だ。




幸いにも舞浜は気付いてないみたいだし。





“見なかった”





そうするコトにした。







…でも。

この“見なかった”が。

後で青ざめたくなるようなウワサを作り出すコトになるなんて。

今は知る由もなかったんだ。



 

< 99 / 280 >

この作品をシェア

pagetop