半熟cherryⅡ
薄明かりの裏通り。
街灯と建物から漏れる光に照らされる横顔。
それは遠めからでも舞浜だとわかった。
なんでアイツこんなトコにいるんだ…?
…また写真撮ってんのか?
だとしたら俺らの方を向いてるはず。
しかもあんなガッツリ見える位置にはいないだろう。
舞浜は。
ケータイを片手に誰かと話しながら周りを気にしてる。
…あの様子だとまだ俺らには気付いてない。
じゃあなんでココに…?
「一美センセーの名前で予約入れてあるから先に入ってていいってさ」
電話を終えた涼真の声がした。
「郁、どした?」
『…や、なんでもねぇよ』
「じゃ、入ってようぜ」
…気になりはしたけど。
これ以上俺と茜のジャマはいらない。
涼真と一美センセイだけで充分だ。
幸いにも舞浜は気付いてないみたいだし。
“見なかった”
そうするコトにした。
…でも。
この“見なかった”が。
後で青ざめたくなるようなウワサを作り出すコトになるなんて。
今は知る由もなかったんだ。