レッテル
たったっっ

廊下の向こうから足音が聞こえた。
すぐ富坂卯月が肩を揺らしながらやって来た。
高瀬はすぐ「おかえり」と呟いた。
卯月は少し驚いたが、すぐ「ただいま」と言った。
「どうだった」高瀬が聞く。
「あ…なかったです、カギ…」
「…そか」と、また高瀬はそっぽ向く。
「職員室にないってことは、理科室の中に…」私は不意に不安感に襲われた。
「あの、どうしま…」
その瞬間、私の前に人影が横切った。
その人影は高く飛び上がり…

パリィィィィン!!!

人影の犯人は高瀬だった。
高瀬は理科室の扉をけりたおしてしまったのだ。
「えええええ!!!」
私が目をまるくして驚いているのに高瀬は構わず
「いくぞ、ピンク」
と理科室に入っていった。
「いや…これどうやって事情を話せば…」
高瀬は理科室にずかずか入るのに対し、卯月はおずおずと入る。
卯月は黒板の前にある大きな教卓をみた。
すると
「あ!カギ!!」
卯月が教卓を指すと、高瀬もその指先をみた。
教卓にカギがぽつんとおいてあった。
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