レッテル
「何で中にカギがあんのにドアしまってんだよ」と高瀬がつぶやく。
「予備のカギ…とか?」
私がそう言うと高瀬は「それかも」と小さい声で言った。
高瀬は部屋の一番うしろの窓際の席へいき、机の中をあさり始めた。
その席はすぐ窓から光が入ってきて、暖かそうだった。
そこにいる高瀬の周りは光のせいなのか、少し発光してるようにみえる。

黙ってればそれなりなのに…。
って、何考えてんだろ私。

「あった」
高瀬が机の中から手を出した。
どうやらわすれものは見つかったらしい。
私はボーっとしていたものだから、少し驚いて床から数センチ浮いた気がした。
「何をわすれてきたの」
「これ」
高瀬は卯月まで静かに近づいて、手のひらのものをみせた。
それはまぎれもなく…

「あめ」以外の何物でもない物だった。

しかもいちご味。
「…これ…飴…」
「そうだけど何」
「いや、何って…」
私は顔が引きつった。
この飴一個のためにドアをぶっ倒したのか…!!
それはドアが「解せぬ」と言うのも無理はない。
この人の中では飴>ドアなのか…!!!?
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