たからもの
「他校の野球部にバレると色々面倒なんだよ。じゃなくても今は大会中なのに」
「分かった」
翼の返事とともに信号が変わる。
「もちろん姉ちゃんの好きな人にもだぞ。俺に関して、変な相談するなよな。好きな人に近づくために弟をダシに使うなんて、サイッテー」
「だっ、誰も隆人くんに相談するなんて言ってないじゃない!」
「へぇ、隆人くんって言うの?」
「……。別にヒナちゃんには関係ないでしょ」
「あるよ。お義弟さんになる人かもしれないじゃん」
「あんたもしつこいわね。人の事言えないじゃない」
駅でも同じことを言っていたので、翼はそう言い返してやった。強めの口調で言ったつもりだったが、言われた本人は「そうかなぁ」などと流暢な事を言いながら、人差し指で頬をかく。
「でも姉ちゃんが男の事、下の名前で呼ぶなんて珍しいね」
「そ、そうかな」
「小学校の時から、ずっとそんな事なかったじゃん。何かあったの?」
自分の事を追究されると怒るくせに、人の恋沙汰にはいつも楽しそうに首を突っ込んでくる。
「私も最初は古橋くんって呼んでたんだよ。でもさ、隆人でいいよって言うから」
「古橋隆人って言うんだ?」
「あ……」
「分かった」
翼の返事とともに信号が変わる。
「もちろん姉ちゃんの好きな人にもだぞ。俺に関して、変な相談するなよな。好きな人に近づくために弟をダシに使うなんて、サイッテー」
「だっ、誰も隆人くんに相談するなんて言ってないじゃない!」
「へぇ、隆人くんって言うの?」
「……。別にヒナちゃんには関係ないでしょ」
「あるよ。お義弟さんになる人かもしれないじゃん」
「あんたもしつこいわね。人の事言えないじゃない」
駅でも同じことを言っていたので、翼はそう言い返してやった。強めの口調で言ったつもりだったが、言われた本人は「そうかなぁ」などと流暢な事を言いながら、人差し指で頬をかく。
「でも姉ちゃんが男の事、下の名前で呼ぶなんて珍しいね」
「そ、そうかな」
「小学校の時から、ずっとそんな事なかったじゃん。何かあったの?」
自分の事を追究されると怒るくせに、人の恋沙汰にはいつも楽しそうに首を突っ込んでくる。
「私も最初は古橋くんって呼んでたんだよ。でもさ、隆人でいいよって言うから」
「古橋隆人って言うんだ?」
「あ……」