たからもの
車内アナウンスが流れ、次の駅名を告げた。ここで降りる人は結構多い。そのため既にドア付近には、ちょっとした人だかりが出来ていた。
そこに陽も加わる。
「あ、じゃあね今日香」
「うん。また明日」
翼たちはひと駅しか乗らないが、今日香は後20分ほど電車に揺られなくてはならない。
そんな今日香に別れを告げて、翼は陽の後を追う。
自宅は駅から歩いて10分ほどだ。
大通りで車がたくさん走っている横の歩道を、並んで歩く。久しぶりだった。
昔はよくここの道路を並んで歩いた。
けれど陽が野球を始め、名前が有名になり、忙しくなってからは一緒にいる事さえ少なくなった。
「本当に平気なの?」
駅を出てから少しも喋ろうとしない陽に尋ねる。
「しつこい」
「だってさぁ」
「それより、俺が怪我した事、あんまり言いふらすなよ」
「何でよ。別に言いふらしたりはしないけど……」
横断歩道の信号が赤になった。2人は立ち止まり、目の前を何台もの車が通り過ぎていく。
「バレたら困る」
「誰に」
陽は大きくため息をついた。きょとんとする姉に呆れた。今日は一体、何回ため息をつくことになるだろう。
そこに陽も加わる。
「あ、じゃあね今日香」
「うん。また明日」
翼たちはひと駅しか乗らないが、今日香は後20分ほど電車に揺られなくてはならない。
そんな今日香に別れを告げて、翼は陽の後を追う。
自宅は駅から歩いて10分ほどだ。
大通りで車がたくさん走っている横の歩道を、並んで歩く。久しぶりだった。
昔はよくここの道路を並んで歩いた。
けれど陽が野球を始め、名前が有名になり、忙しくなってからは一緒にいる事さえ少なくなった。
「本当に平気なの?」
駅を出てから少しも喋ろうとしない陽に尋ねる。
「しつこい」
「だってさぁ」
「それより、俺が怪我した事、あんまり言いふらすなよ」
「何でよ。別に言いふらしたりはしないけど……」
横断歩道の信号が赤になった。2人は立ち止まり、目の前を何台もの車が通り過ぎていく。
「バレたら困る」
「誰に」
陽は大きくため息をついた。きょとんとする姉に呆れた。今日は一体、何回ため息をつくことになるだろう。