通りすがりのイケメンさん
力を緩めず、ずっと抱き締めてくれている彼。

「お父さんは渋々引き下がってくれて、
他の部屋を用意してくれた」

「・・・」

「再婚者の人は、最初はすごく優しそうで、
この人だったらいいかなって少しは思った」

「・・・」

「・・・けど、違った」

「・・・」

「その人は、お父さんにはいい顔して、
あたしはこき使われて学校から帰ってきたら
掃除洗濯夕飯作りをやらされた」

「・・・」

「あたしが全部やったのに、その人は
"自分がやった"って言って。
あたしはお父さんに"お前も手伝ってあげなさい"
って言われて
それがずっとずっと続いた」

「そのこと、お父さんに言わなかったのか?」

「"お前の話を聞いてる時間はない"っていつも」

「・・・」

「っ・・・なんであたしだけってっ・・・いつも思って・・・っ」


やばい。目元が熱い。声が震える。

あたしはギュっと目をつぶる。

神崎優輔のシャツを掴んでいた手にも力が入った。
それに気付いた彼は、あたしの背中を優しくさすってくれた。


「命令を無視してあたしが部屋に篭ると
次の日の朝ごはんがあたしの分だけなくて」

「・・・」

「お父さんは早くに出てっちゃうからそのことを知らない」

「・・・」

「もしあっても、その日の夜に電話がきて、
"明日、あなたがいい子にしないってせいじさんに言うわね"
みたいな脅しをいっぱいされて」

「・・・」

「お父さんはあの人が1番だからあの人が望めば
あたしに暴力でもなんでも振るうの」

「・・・」
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