ガラクタのセレナーデ
 その会話の内容から、いろはは自分が今置かれている状況を知り、恐怖で背筋が凍りついた。
 だが、全身が鉛のように重く、やはり動くことは叶わない。

 ようやく、薄く目を開けることはできたが、視界はぼんやりと霞んでいた。
 照明もない薄暗がりの中、窓から差し込む月明かりだけを頼りに、目を凝らす。

 そうして、いろはの傍らにいる男が手にしているもの、それが注射器であると認識し、恐怖で身体の熱が一気に冷めていくのを感じた。

 このまま薬漬けにされ、そしてどこかへ売られるのだと、そんな絶望感に襲われた時、
「ぐぇっ……」
 カエルの鳴き声のような潰れた声が聞こえ、どさりと人が倒れる音がした。

 注射器を持った男が反射的に振り返る。
 が、次の瞬間、長い鉄の棒が、男の頭に振り落とされ、目の前の男の身体も崩れ落ちた。

 ぼんやりとだが、いろはの眼に、金髪の男の姿が映った。
 その艶だった真っ直ぐな髪は、月明かりに照らされ、まばゆいほどに輝き、
 身に纏ったダークな色調の服のためか、より浮きだって見えた。


 男が手にしていた棒を手放すと、カランと乾いた音が響き渡った。




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