ガラクタのセレナーデ
「報告書はあんたが書けよ。
 俺は頼まれた仕事をしただけだ」
 目を合わせぬまま吐き捨てて、那智は有坂に背を向け、逃げるようにその場を去った。

 有坂より気持ち年上の刑事が、背後から声を掛ける。
「宿題山盛りだなぁ、有坂刑事」
 面白がって茶化すように言った。

 振り返った有坂は、おもむろに不機嫌な顔をする。
「ガキのくせに……生意気なんだよ」
 そう愚痴をこぼすと、
「誰かさんに、そっくりだな」
 さらに面白がって言い、その刑事は笑った。


 それまで呆然とその様子を眺めていたいろはは、突然我に帰ると、二人に駆け寄った。

「刑事さん、さっきの人、『那智』っていうんですか?
 苗字は? 苗字を教えてください」
 有坂に縋りついて、必死で問う。

 有坂は、驚いていろはを見下ろし、そして困ったように苦笑する。
「彼の立場は、ちょっと複雑で……
 俺の口からは言えません」
 宥めるように、穏やかに言った。


< 52 / 56 >

この作品をシェア

pagetop