EGOISTE


な、何だよ!俺はナニもしてねぇよ!!


ってか俺(じーちゃんも)は被害者だ!


「昨日入院してきた田中さんでしょ?一晩中喚いてあちこちから苦情が来てたんです。やっぱり煩かったですか?」


とじーちゃんの点滴を換えにきたベテランナースが、俺のベッドに来て少しだけ若いナースを睨む。


「あ、そうだったんですかぁ?」若いナースがちょっと恥じ入ったように俯いた。


「そーゆうわけです」


その日は夕方まで検査が入っていなかった。午前中いっぱいはゆっくり眠れるだろうが、それでも夜と違ってやはり院内は賑やかだ。


俺はこう見えても神経質な方だからな、こんな喧騒の中で眠れるほどの神経を持ち合わせていない。


「では軽くお薬を処方しますよ」


検診に来た初老のドクターが、無愛想に言った。


睡眠薬なんて仰々しいものじゃなく、軽い入眠剤だと言って手渡された薬を朝食後に服用した。


ホントに効くのか?と半分…いや、半分以上疑っていたけれど、


効果は抜群だった。


俺は30分もしないうちに、瞼が重たくなっていくのを感じ、その10分後には完全に意識がなかった。




――――


――



どれぐらい眠ったのだろう……


瞼の裏で時間と空間が奇妙に歪んで、夢を見ているのか、あるいは現実を聞いているのかさえも分からない不思議な感覚に陥った。



「……い、先生」



混沌とする意識の中で、





俺は鬼頭の声を聞いた。







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