EGOISTE

黄色い薔薇


結局俺は日本酒を冷で猪口一杯飲んだだけに留めておいた。


別に鬼頭に言われた言葉を気にしてるわけではない。


何となく、飲む相手がいなくて寂しかったからだ。


こんなんなら、水月でも誘うべきだったか。


いや、あいつを誘ったら絶対歌南もくっついてくる。


それだけは嫌だ。


飲んだ後片付けもそこそこに、俺はベッドに入った。


昨日と同じ場所で鬼頭が相変わらず布団をきっちりかぶり目を閉じてる。


俺は起こさないように、そっと隣にもぐりこんだ。


何となく鬼頭に背を向けて、横向きになる。





「先生……」



横を向いたままの俺に鬼頭がそっと呼びかけてきた。


「……何だ?寝てなかったのかよ」


「うん。先生、今日はいつもの香りがしないね」




香り?


ああエゴイストのことか。



「寝るまでつけるか。マリリン・モンローじゃあるまいし」


「今だけ?」


「あ?」


「香水をつけないのは」



俺はごろりと身を返すと、仰向けになった。


視界の端に鬼頭の姿を捉える。


鬼頭は、体ごとこちらを向いていた。




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