初恋


「ほら、裕樹君も起きて!」

「……ん。あぁ……」

眠そうにしながらだけど、起きた裕樹君を見て、ほっと一息吐いた。

「なんか、紗羅ちゃんって母親みたいだな」

「本当。よし、これから紗羅ママって呼ぼう」

「えっ!?それは駄目!」

「えー。面白いのに」

「面白くても絶対に…」

駄目、と言おうとしたとこで先生が来てしまい話を遮られてしまった。

「じゃあ紗羅ママ。席戻るねー」

「ちょっ、真樹…!」

私の声を聞かず、真樹は自分の席に行ってしまった。

「……はぁ」

溜め息を吐けば、翔君が手紙を渡してきた。

【俺は呼ばないから安心してくれよ】

男の子には少し珍しい、綺麗な字でそう書かれていた。

【ありがとう!】

そう書いて手紙を渡せば翔君は嬉しそうにはにかんでいた。


その理由をこの時の私はまだ知らずにいたんだ。


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