!戦いで人は成長する!
試合開始の合図がなった。
相手はゆっくりMに近付いてきた。
Mは間合いをはかってローキックを膝に当てた。
鈍い音が会場内に響き渡ったが、相手はびくともせずに近寄ってきた。
相手とMとの距離が1メートル以内になった時、相手は胸の前でクロスしていた拳を両斜め上からクロスのまま振り下ろした。
Mの両肩に硬そうな拳が突き刺さった。
痛みのせいで構えていた両手が下がってしまった。
相手はスキを与えず、肩を突き出しMの胸に突進した。
体重が80キロあるMだったが、3メートルぐらい飛ばされて場外の硬い床の上に落ちた。
相手は自分の立ち位置に戻り、Mが起き上がるのを待っていた。
しかし、Mが立ち上がらない。
僕が見に行くと、気を失って倒れていた。
僕は両手を高くあげて審判に試合続行不可能を知らせた。
試合開始1分32秒で決着がついてしまった。
不安を隠せないEに、
『奴はパンチが得意やから両手に注意して動け。』
と、指示を出した。
その後、Kが立上がりEの背中を叩いて、
『自分を信じろ。』
と、囁くように言った。
僕は横に座ったKに、
『俺の時もアレ言ってくれよ!』
と、冗談をとばした。
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