気まぐれ社長の犬
その時、みんなの心配とは裏腹に私の心の中は何故か黒く渦巻いていた。
誘拐されたんだ、みんなに心配されて当たり前だ。
だけど…羨ましいだけなんだろうけどなんだか目障りだった。
響城さんにまでこんなに心配してもらって、むかつく。
最低なんだろうけどその言葉しかなかった。
私の命を狙おうとした女だ、このまま死んじゃえばいいのにとまで思ってしまう私は本当に最低なんだろう。
ああでも…死んでしまったら響城さんの心にずっと残っちゃうからだめか。
そんな事を考えていた時、家の電話が鳴った。
「出てください」
「は、はい…もしもし」
「お前の娘は預かった。返して欲しければ1億用意しろ」
「な、1億だと!?そんなすぐに用意できる額じゃ…!」
「用意できなければ娘が死ぬだけだ」
「わ、わかった!わかったから娘にだけは手を出さないでくれ!」
変声期で変えた声が紡ぐ残酷な言葉に向かって哀願する父親。
「なら2時間以内に用意しろ。細かいことは2時間後また電話する」
そう言って一方的に電話は切られた。
「逆探知は?」
「できませんでした」
無能が…なんていう口に出しそうになった言葉は心にしまった。
「1億というのが犯人の要求でしたが、用意できますか?」
「するしか、ないだろう…」
「僕も払いましょうか?」
「いや、大丈夫。1億ならなんとかなる額だ。婚約を破棄した君にそんなに迷惑をかけられないよ」
「そんな、迷惑だなんて」
麗美さんのお父さんはお金を作るために部下に色々と指示をだす。