気まぐれ社長の犬
私が服を脱ごうと手をかけた時、それは響城さんの手で止められた。
「止めとけ。自分の体ぐらい大切にしろよ」
「え…?」
私は驚いて目を見開いた。
そんなこと、初めて言われた……
響城さんの真剣な目があたしの心に突き刺さる。
「…だってあなたは私がいらないんでしょう?なら利用すればいい。あたしの体も何もかも差し上げます」
利用されるのはもう慣れた。
それよりも必要とされなくなる方が嫌。
「そんなもんいらねえよ。くれなくたって欲しい物は自分でとる」
「…あなたも私なんかいらないんですね」
あたしの目にどんどん涙が溜まっていく。
泣くな…もう少しだけ
我慢しなきゃ……
「私は、いりませんか?」
「ああいらない。俺にお前は必要ない」
その瞬間、私の頬を涙が伝った。
それは月明かりに照らされ響城さんの目に届いた。
「え……」
「そうですか。なら私、出ていきます。私は女ですから1人でも生きていく方法はありますから。明日の朝、出ていきますね」
私は早口でそう言うと響城さんを部屋の外に押し出した。
「えっちょ、ま……」
「さようなら」
私は無理矢理笑顔を作って扉を閉めた。
その瞬間我慢していた涙が次々と頬を伝った。
おじいちゃんごめん……
私、変われなかった。
結局私は誰も必要としてくれないんだね……
「もう、消えたい……」
私はそのまま朝まで寝ずに、日が昇ると家を出た。
「1日だけだったけどお世話になりました」
美しい花たちと幸せな家。
きっと私のいる場所じゃなかったんだ。
さようなら……