気まぐれ社長の犬
あれから時が過ぎ、月曜日になった。
今日は奏女ちゃんをテニスの試合に連れて行く日だ。
朝会社に行った後、私はいつものようにソファーに座った。
「あっすみません今日私北条組の組長と会う予定があるんですけどよろしいですか?」
「ああ。気をつけて行ってこいよ」
「はい。では行って参ります」
「今からか?早いな」
「ええ。何か相談したいことがあるそうです。まあ祖父がらみだとは思いますが」
「そうか。じゃあな」
「はいそれでは失礼いたします」
私は丁寧に扉を閉めた後、走って会社を出た。
タクシーを止めて病院まで行き、奏女ちゃんの病室に入るともう準備万端な奏女ちゃんがベッドに座っていた。
「遅い!!」
「ごめんごめん。ラケットは?」
そう聞くと奏女ちゃんは布団の中からラケットが入ったバックを出した。
「じゃあ行きましょうか」
私は奏女ちゃんに帽子をかぶせて病室を出た。
なるべく人通りの少ないところを選んで通るも、大きな病院だから明るいし人通りも多い。
はあー…これ無事に行けるかな?
「あっ」
「えっどうしたの?」
奏女ちゃんの視線の先を辿ると、若い医者が歩いている。
「あれ、奏女の担当医なの。どうしようきっと検診に行くんだ」
「えっうそ!!」
どうしよう今行かれたら、すぐにばれちゃう……
いや、でももしばれてもその時病院内にいなければ見つけようがない。
「奏女ちゃん走ろう」
「えっ?」
私は奏女ちゃんの腕を掴んで走って病院を出て急いでタクシーに乗り込んだ。
行き先を言うと車はゆっくり走りだす。