気まぐれ社長の犬
「…全部、とは?」
「花月妃和23歳花月家のご令嬢。成績優秀容姿端麗。母親は有名な女優で滅多に家には帰らない。父親はあんたを道具としか見てない。そのせいか心には冷たい闇が存在し、愛を知らないとも言える。そして弟には…「やめて!!」
私は遊川さんの声を遮り、耳を塞いだ。
これ以上聞きたくない…
「もう…やめてください」
「悪い…」
私が遊川さんに目を向けると、少し申し訳なさそうにうつむいた。
「…いえ。それほど響城さんが大事なんですよね?」
「ああ。あいつは俺の大切な友達だからな。だからあんたの事も全部調べさせてもらった」
「じゃあ、私が婚約者なのは反対ですか?」
私の過去は、人に話せるようなものじゃない。
それを全て知っているなら、響城さんの友達なら応援は出来ないだろうな。
「いいや」
「えっ!?」
軽く発せられた予想していたのとは全く反対の言葉に、私は驚いた。
「確かに最初は何だこいつって思ったよ。でも今日会って、情報とは全然違ってた。あいつがあんたを変えたんだろ?」
そうだ私は、響城さんに出会って、たくさんの事が変わった。
エレベーターの扉が静かに開く。
「響城に幸せにしてもらえ。あんたになら響城、やるよ」
遊川さんはそう言って、私の頭をぽんっと撫でると手を振って出て行った。