夕闇の旋律
答えに至る道
悠矢は辞書から目を離すとほっと溜息をついた。

過去、自分と同じ病気にかかり、そして死んでいった人たちの日記や手帳。

不思議なことに、すべての人たちが、死の最低でも2ヵ月前に大事だと、好きだと思える人と出会っていた。

幸せだと、そう最後には感じて死んでいた。

自分もそうなるんだろうか?

隣で、俺のために歌ってくれる彼女が、僕の幸せになるのだろうか。

ただ、幸せを感じて死んでいって、そして、彼女を残してしまう。

そして、彼女には思い出だけしか残らない。

悲しみしか残せない。

きっと。

彼女は……。

もしかしたら、と思うこともある。

魔女である彼女なら、奇跡を起こしてくれるんじゃないかって。

何か、希望の残るものを残せるんじゃないかって。

彼女と一緒なら、大事な人達を悲しませて一人死んでいった人達とは違う終わり方ができる、と思った。

机の上にはルーズリーフとシャープペンシル。

俺は、なにか奇跡を残したくて、今生きてるんだと思う。

彼女に出会って、俺は生きて、そしてだれかにそれをつなげるために……だれかを悲しませないために……歌を作ろう。

俺と詩音の魔法の歌を。
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