夕闇の旋律
病室は閉じきってたから気が付かなかったが、今日は暖かかった。

もう春だった。

桜のつぼみも見える。

病院の隣にある公園で子供が歌っているのが聞こえた。

自分が一応在籍している中学校の吹奏楽部の練習する音が聞こえた。

道行く人の話し声が、風の音が、誰かを呼ぶ声が聞こえた。

悠矢は立ち止まって目を閉じてみた。

音でいっぱいで、もし、耳が聞こえなくなったら、自分は耐えられないだろうな、と思えた。

音で世界は色めく。

暗く、音のない夜は色を感じることができない。

悠矢は目を開けると駆け足にゴミ袋を捨てに行った。

不思議と、今なら彼女のために書けそうな気がした。
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