夕闇の旋律
「おはよー悠矢くん。わぁ、制服姿って新鮮ー」

どこで知ったのか(どうせ太一か委員長に決まっているが)、詩音が家の前で手を振っていた。

長い髪を三つ編みにして、セーラー服を着ている詩音は正直言ってすごく可愛かった。

びっくりするほど似合っている。

「どうしたの?あ、私の制服姿も珍しいから見とれてるのか」

あっさり図星を言い当てた詩音は悠矢をずるずると引っ張って歩き始めた。

「に、似合う……その制服」

悠矢がやっとのことでそういうと、詩音は少しだけ嬉しそうに微笑んだ。



「私は先に教室行くけど、悠矢くんはまずは職員室ね。あ、そうそうクラスは1組。ミオも太一くんも同じクラスだからね。ミオは今年も委員長」

学校につくと詩音はそう言った。

「へえ。偶然にしては上手い配置だな」

「無駄に国家権力使えるからこれくらいできるんだよ」

「……なんか、微妙な気持ちになる」

「実は私も。ただ、同じクラスだといいなーって言ってみただけなのに」

詩音は苦笑して肩をすくめた。

そこで、なにかに気付いたようにぴたっと動作が止まってじーっと悠矢を見つめてきた。

「あ、もしかして、案内いる?」

「……あー。……お願いします」

来たことがないとはいえ、自分の通っている学校を転入生に案内されるというなんとも情けない状況ができてしまった。
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