【完】甘い恋よりもそばにいて



そこからは何かが吹き飛んだように
心が軽くなった気がして
素直に楽しめた。




カタチ的にはダブルデートだけど
今日はじめて会った者通しが
会話が弾む訳もなく




あたしと啓の会話も
先輩と啓の会話も



ほとんどなかった。




あるのは
先輩と由奈さんの会話や
あたしと由奈さんの会話だけ。




午前中はそんなふうに過ごして
お昼は別々に食べて、
1時にまた落ち合うことになった。





「それで、どんな感じよ?愛しい彼は…」




昼食のピザを頬張りながら先輩はあたしに問いかけた。





「あー今はちょっと
先輩に感謝してるかもしれません…。」



先輩は不思議そうな顔をした。




「なんか、現実受け止められたっていうかなんていうか……。
挨拶したときにはじめましてって言われたのはびっくりしたけど、
ぁー啓はきっと由奈さんが大切だから、不安にさせたくなくて嘘をついたと思うんですよ。
それは他の誰のためでもない、彼女のため。そう考えたら仕方ないかなって…優しい彼らしいと思うし」




「ふーん。お前の言ってる自分が犠牲になるその理論、俺にはよくわかんねーけど」





あたしが懸命に出した答えを
先輩はさらりと否定する。




「そんなこじ付けの理由じゃ、お前は沖田啓を諦めらんねぇよ」



「…そんなのわかんないし、先輩には関係ないじゃないですか?」



「あるよ。関係大有り、莉華に…はやく俺だけを見て欲しいから…」




ふざけた口調なのに
そう聞こえないのはきっとあたしの耳が変なせいだ。




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