君しか見えない。
「…久しぶりに思い出したな。
あの時の、――ミズの表情(かお)」
何となく、懐かしくなって。
だけどそれと同時に、ひどく泣きたくなった。
どうして俺は、ミズを泣かせることしか出来ないんだろう。
あの頃の俺はただ、
誰かに甘えたかっただけかもしれない。
甘えられる存在だった母親がいなくなって。
そんな俺には、ミズの存在が羨ましいと同時に疎ましくも感じたんだ。
だから――…
「あんなこと…
言うつもりなかったんだ…」
空に伸ばした手が、空気を掴んだ。
それは俺とミズの関係を表しているようで。
「……ミズ」
本当はずっと、思ってる。
――側に、いてよ。
![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.berrys-cafe.jp/assets/1.0.786/img/book/genre1.png)