君しか見えない。


ただただ、ミズは泣きながら謝って。



泣きたいのはこっちなのに、なんでお前が泣くんだよって言いたくなった。


それからミズは、うちには来なくなった。

同時に、俺はスレた奴らとつるむようになって。



二人の距離は、離れた。



だけど、中学2年の秋くらいにミズは突然俺の家へと訪れた。

手の中に、タッパーいっぱいのおでんを持って。




「これ…っ」




数年ぶりに交わした言葉。


ミズの声は震えていて、

ただ単に俺の外見に怯えていたのか。
それとも俺自身を怯えるようになったのかは、分からないけれど。




「…おう」




タッパーを受け取る際に触れた、ミズの手は。
昔と変わらず温かかった。
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