クリスマス・ハネムーン【ML】
 僕の言葉に、佐藤は、首を振った。

「まさか!
 霧谷さんは、海なんかじゃなく!
 絶対、螢さんに付き添っていたいって、思うはずですよ?」

「……僕の方が、こんな……
 見苦しい姿を……ハニーに、見せたく……ないんだよ……
 次の日には……ちゃんと……ハニーと会うから……一日くらい……僕に時間を……ちょうだい?」

「……螢さん……」

 佐藤は。

 僕を哀れむように、見ると。

 声を詰まらせて、ようやく、うん、と頷いた。

「わかりました。
 霧谷さんには、わたしがついていますから。
 螢さんは、ゆっくり休んでいて下さい」

「ありがとう………よろしく……ね」

 僕は、揺れる声を抑えて、ハニーの姿を焼き付けるように見つめて。

 そして、もう一度目を閉じた。

「……螢さん……?
 本当に……大丈夫ですか?」

 心配そうな、佐藤の声を聞きながら。

 僕は、目をつむったまま、応えた。

「僕は、大丈夫……
 でも……さすがに疲れちゃった……
 他に誰か来るまで……少し休むよ」

「螢さん……!」

「大丈夫だって……
 ……佐藤……
 ……僕は、今すぐ……あんたの前で死んじゃうわけじゃない」

 僕は囁いて。

 きしむカラダを励まして、寝返りを打つと。

 眠り続けるハニーに、完全に背を向ける。

 そんな僕に。

 まだ何か言って来る佐藤を無視して、僕は、心の中で、つぶやいた。




 ……さよなら。

 ハニー。

 僕は。

 君のことを、心から。

 とても。

 ……とても。

 愛していたよ……



 
< 121 / 174 >

この作品をシェア

pagetop