クリスマス・ハネムーン【ML】
「え……っ!
 なんですって!」



 僕の言葉に、佐藤は、驚き。

 続く声を一瞬失うと。

 力なく横たわる僕に、のしかからん勢いで、僕に近寄って来た。

「なな……なんてことを言うんですか!
 止めて下さいよ!
 まるで、これから、死んでしまうような……っ!
 霧谷さんと、別れるような言い方なんて!」

 佐藤は、僕の縛られた手を抱きしめて、真剣な顔をして言った。

「それは、螢さんがこんな風に傷ついて、霧谷さんもショックでしょうが!
 あの人は、それで螢さんを責めたり、別れようなんて、言うような人じゃ、絶対、ありません!
 もし、霧谷さんの意識が戻って、経緯を知ったら………!」


 うん。

 そうだね。

 きっとハニーは、絶対に。

 僕と別れるって、そんなこと言わない。

 むしろ、僕を気づかって。

 暖かい羽根のように、優しく抱きしめてくれるだろう。

 優しい。

 優しい、僕のハニー。


 ……だけど僕に突きつけられた現実は。

 優しいだけじゃ、生きていけないって教えてくれたから。



 ……だから。


 僕は、一度静かに目を閉じて、涙が流れてこないことを確認すると。

 微笑んでみせた。

「霧谷さんの……ことは……僕が一番……良く知ってるよ……
 ……それに。
 僕が……こんなことぐらいで……死んじゃうわけ……ないだろ?
 ……血の出るような……怪我なんて。
 プールで……かすった頭と。
 下半身の……あまり……言いたくない場所にあるヤツや……噛み跡ぐらいで……
 失血死するほど……じゃない……」

「……でも!」

 更に何か言いそうな佐藤に、僕は、笑う。

「……ハニーも、薬さえきちんと飲めば……すぐ良くなるって言っても……今日は……ベッドから出られないだろ?
 でも……僕も……ハニーの世話が出来ないし。
 ……明日ハニーは……元気になったら……海に出たがるかも……」

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