クリスマス・ハネムーン【ML】
 いつも、へらへらしている岩井には、珍しく。

 ヤツは、血相を変えて、僕を追いかけて来た。

 その、岩井から逃げようと。

 とうとう、沖に向かって泳ぎ出した僕の足を、岩井は掴んで、引っ張った。

 とたん。

 僕のカラダは、大きく沈んで、海水をしこたま飲み。

 盛大にむせ込んだ。



 げほっ、げほげほ……っ!

 ……く、苦し……


 あまりの苦しさに、周りが見えなくなり。

 出て来た涙は、海に溶けた。

 ただ、空気を求めて、そこら中を必死で手探りし。

 掴んだ手掛かりに、すがれば。

 それ、が僕を抱きしめ返して来た。

 それで、ようやく、酸素にありついて。

 目を開ければ。

 岩井の顔が、すぐ近くまで迫っていた。

 僕が、すがったのは、岩井だったんだ!

「……!」

 反射的にもがく、僕を。

 岩井は、逃がすまいと、しっかりと抱きしめて、怒鳴る。

「何で、死のうとしたんだよ!
 昨日の夜が、原因か?
 あれっぽっちで、軟弱なヤツ!
 時間がなくて手荒だったのは、認めるが、マジで殺しにかかったワケじゃなし。
 ちょっと、ハードな、遊びだと思えば、大したことは、ねぇ。
 そもそも、お前だって、気持ちよがって、鳴いてたじゃねぇか!
 あれも、一種の愛情表現だろ!」



 なんだって!


 ふざけんな!


「あんなモノが、愛情表現なワケがない!
 ヒトの心を無視して、無理やり快楽を引き出すやり方なんて!
『愛情』なんてものは。
 もっと、相手を想いやった暖かい……」

「手荒なことは、悪かった、って言ってるだろ!」

「そんな問題じゃない!」

「何が、嫌だって言うんだよ!
 お前だって、昔は!
 女に乞われるまま、そうして来たクセに!
 今更なんだ!
 自分が受ける方になったら、痛いのか……!?」

「……う」

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