クリスマス・ハネムーン【ML】
 最初は医師の言うことを聞いて。

 真面目に、手を繋いで眠ってただけなのに。

 大きな事件のあとの丸三日の空白は、思いのほか、不安で寂しくて。

 いつの間にか、互いに、求めあって抱きしめあって、眠ってた。

 ……なんて。

 ここまでは、良かった。

 けれども、医師にとやかく言われるまでも無く。

 本当に僕は、ボロボロで、ハニーを受け入れる余裕もない。

 気持ちは、盛り上がったけれども、果てることが出来なかったから。

 ハニーの方もつい、僕を強く抱きしめたまま。

 体重を半分かけるようにして眠ってしまい。

 ……途中で、下にいた僕が苦しくなったんだ。

 人は眠っている時。

 胸に圧迫感を感じると、悪い夢を見るらしい。

 それで、僕は、見なくても良い悪夢を見た。

 夢の中で、僕は、現在のケアンズ中、全てを見渡したような気がしたけれど。

 もちろん、それは、ただの夢以外、何物でも無く。

 万が一。

 一瞬でも、本物の千里眼を手に入れ、外の光景を眺めることが出来た、としても。

 街中の人々が、意識を失って倒れているのも、当たり前だ。

 今の時刻は、午前三時過ぎ。

 みんな、普通に眠っている頃だから。



 ……

 ハニーの合成した毒ガスで、街中全滅、だなんて。

 絶対に、あり得ない。

 ……


 
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